「JSTQB(※)って取る意味あるんですか?」
その昔、JSTQB取得の推進をしていた私にかけられた言葉。
その問いに私は答えられなかったのです。
あれからかれこれ6年…。
様々な経験を積んで自分なりの回答が出ました。
質問したメンバーとは疾うの昔に離れてしまったけれど、今更だけれど、回答を書こうと思います。
※JSTQB……Japan Software Testing Qualifications Board。認定テスト技術者資格。国際資格ISTQBの日本版。
テスト業界の「共通の言語」を獲得できる
言葉は相手に考えを伝達するためのインターフェイスです。
規格が違えば考えが伝わらないことは当然のことです。
これは私が「社外のコミュニティ」に出て初めて分かったメリット。
社内に目が向いている場合は全く気にする必要がない事柄です。
私が社外に出始めて最初にぶつかったのが「言葉の壁」でした。
社内はガラパゴス的進化を遂げていたため、言葉も元から離れてしまっていました。
結果、社外の人に意図が伝わらなかったのです。
例えば「アドホックテスト」。
社内では「アドホックテスト」と言ったとき、テスト業界でいうところの「探索的テスト」のことを意図しています。
これを社外で使った場合はどうでしょう?
テスト業界としては「アドホックテスト」=「場当たり的なテストで単なる思い付きで叩く誰でもできるテスト」という意味で使われます。
こちらが意図していることと大きく違った意図を与えてしまうのです。
探索的テスト、アドホックテストといったテスト用語はJSTQBで学習できます。
テストを重要視している会社はテスト業界用語をベースとしているところが多いですし、社外発表はテスト業界の用語を使った発表が多いです。
社外とのコミュニケーションをする、社外勉強会で知識を持ってくる……
そう思ったとき、テスト用語を知らないと一苦労したり、チンプンカンプンで帰ってくることになります。
さて、私がやってしまった例を挙げましょう。
社外の小さなイベントで
「アドホックテストのやり方」
という発表をしたことでしょう(^-^;
最後の質問で「なんで今更アドホックなんですか?」というマサカリが直撃したことは言うまでもありません。
あなたが将来ぶつかる問題の答えを示している
JSTQB Foundation Levelを会社に勧められて受けることになった……
たぶんそうなるのは入社1年ほどのテスト実行者段階の人に多いかと思っています。
このテスト実行者段階の人がJSTQBのシラバスや教本を読んでまず思うことが
「え、業務に必要ないことしか載ってなくね?」
です。
インスペクション?は?
デシジョンテーブル?なにこれ?
え、これってあれでしょ。よその会社の話。ウチはウチっしょ。
といった感じで、テスト実行時に必要なことがほとんど載ってません。
それもそのはず。
JSTQBの教本はテストプロセスの全体的なことが書かれています。
テスト実行はテストプロセスのごく一部にすぎません。
出典:https://appkitbox.com/knowledge/test/20121112-103
よって、テスト実行者段階の人にとってはほとんどが使えない知識です。
「今は」。
テスト実行者段階の人も、そのうちテスト設計をすることになったり、マネジメントを行うようになります。
そうするとこんな問題にぶつかってきます。
「テスト段階になっても「あ、そこまだ仕様が決まってません」とか言われるんだよ!ここ最初から決めておけばこんな手戻りしなくて済んだろー! 企画しっかりしろー」
そうなってくると
「仕様書段階からツッコミ入れた方よくね?」
といった名案が閃きます。
調べていくと「仕様書のインスペクションやウォークスルー」といった話が出てきそうですね。
そこでハタと思い出します。
「これ、JSTQBでいってたやつだ」
JSTQBでは最初にあなたに「答え」をもたらします。
ですがあなたは経験不足で、その答えが「何から沸き上がった問題の答えか」がわからないのです。
けれど、経験を積んでいくうちにテストプロセスの大部分を経験するようになります。
経験を重ねる中で実務の問題が発生します。
そこでようやくJSTQBで示された答えと実務での問題が合致します。
JSTQBが実務に活かされる瞬間を迎えることとなります。
ソフトウェアテストを体系的に学べる
テスト業界に入って、しばらくすると
「テストの勉強をしてみよう」
と思ったりします。
けど何から勉強していいかわからない……ということがほとんどです。
ソフトウェアテストというジャンルもまだマニアックですので、ネットで調べても、ピンポイントでコアな情報が出てきたりして「う~ん」と悩むことになったりします。
twitterなどのコミュニティを見ても、何やら難しい用語で議論していてよくわからないでしょう。
そういったときはJSTQB(Foundation Level)は最適かと思います。
先にも述べた通り、ソフトウェアテストの全体を取り扱っています。
一通り学習すれば、使われている用語の把握、テストプロセスを俯瞰できるようになるかと思います。
全体がわかれば自分の立ち位置が見えてきます。
自分の立ち位置がわかれば、そこを掘り下げて学習することも可能でしょう。
自分がこれからどこへ向かえばよいかもわかるでしょう。
けれど最初は「どこかよその会社の話」に思えるかとは思いますw(上に書いた話より)
ある程度の水準に達していることの証明
資格試験全般に言えることですが、その試験に合格できるという事は、第三者が認める水準に達したという事です。
例えばJSTQB Foundation Levelに合格した、ということは……
- テスト業界用語を使っても会話が成立する(はず)
- テストを体系的に学び、知識として知っている(実践しているかはさておき)
- テスト経験をある程度積んできているだろう(なんとなくテストをやっている場合、JSTQBは割と落ちる)
もちろん資格がなくても凄腕の人はたくさんいます。
ですが持っていると、JSTQBで線引きしている水準に達している人、といった証明になります。
転職活動
転職活動の時、資格の有無で採用不採用が決まることはほぼないと思っています。
ただし上で書いた通り、ある程度の水準に達している、という判断材料程度にはなりそうです。
それに最初に書いたように「共通の言葉で話せる」といったこともあります。
教育コストの観点ではありがたいと言えるでしょう。
もしかしたら、JSTQB Advanced Level(合格率10%)になってくると面接官も前のめりで鼻息が荒いかもしれません。
逆もまたしかり。
面接に行った先で、現場担当の人が面接官だったとして「テスト組織でJSTQBを所有している方の割合は?」といったことを聞いてみるのもよいかもしれません。
回答が
「じぇ、JS…え?あ、 JASDAQですか? 株はちょっと…」
だったとするならば、あなたは入社後テスト組織のフロンティアになることでしょう。
***
いかがでしょうか?
私が経験から感じたことは「本気でテストに取り組んで突き進んでいるとき、悩んでたプロセスのヒントや答えが載ってるよ」です。
テスト業界も自動化やAIなど新しい技術は出ていますが、根本的な手法や構成は大きく変化はありません。
この業界でメシを食っていこう、と思う人でしたら勉強してみてもよいかと思います。
おそらく資格取得時は「なんかよくわからんけど覚えた知識」ですが、経験を積んでいくうちにその知識が実践で活かすことができる知恵へと昇華するでしょう。
追記
Twitterで以下のようなご意見もいただいております!
よいエントリー!
— リナ? (@____rina____) 2018年2月14日
個人的には国際資格てところも推して欲しい!
どの国で受けても取れるのスゴいと思うんだよ
お返事ありがとうございます。
— akiyama924🍢 (@akiyama924) 2018年2月15日
私が資格【取得】に感じているメリットは「次のスキルセットの勉強に進めること」です。
例えば湯本さんのようなテストエンジニアになりたいって思ったとします。
もし、合否が分からなければ「基礎固め、まだまだ」と思って一生基礎の学習をしてしまうかもしれません。