「メンバーを褒めよう」
チーム作りの話を聞くとよくこの言葉を聞く。
褒められると人は伸びるらしい。
なぜ?
そう聞くと「嬉しいから、さらに先へ進もうとする」といった解が返ってくる。
なぜ嬉しいのだろうか?
なぜ嬉しいと伸びるのだろうか?
「自己重要感」を感じたとき、認められた時、人は嬉しいと感じる
心理学者のウィリアム・ジェームズは「人間の持つ性情のうちでもっとも強いものは、他人に認められることを渇望する気持ちである」という。
哲学者で教育家のジョン・デューイは、人間の持つ最も根強い衝動は「重要人物たらんとする欲求」だと言っている。
心理学者のアブハム・マズローは欲求段階説の四階層に「承認欲求(尊厳欲求)」を置いている。
「褒める」という行為を考えてみよう。
褒めることにより、そのメンバーの行動が評価に値するものだと認め、承認欲求を満たすことにつながっている。
褒めることにより、そのメンバーがチームまたは依頼した人に対して何らかの貢献をし、その件において重要人物であったと認めている。
つまり、メンバーは褒められることによって自己の重要感を一時的ではあるが満たし快楽を得る。それが「嬉しい」である。
さらに重要であらんとする欲求、それが前へ進む力にもなる。
自己評価と他者評価が一致しているときに、より嬉しい
ならば何でもいいから褒めればいいのであろうか。
誰しも一度はお世辞を言われて苦笑いしたことはあるだろう。
自己評価と相手からの評価が不一致の状態である。
自身が認めてもらいたいと考えている行動に対して「褒められる」ことが最も嬉しいものである
自身が頑張った、または得意だ、能力が活かされていると思っていることに対して、正当である(と本人が考える)評価をもらった時、認められた、と感じる。
得意としているところを褒める。どうやって得意を知るか?
メンバーには得手不得手があり、関心を寄せていることも異なる。
ソフトウェアテストを例に挙げるならば――
- テストケース進行が得意なメンバー(進捗が目に見える状態が好き、タスクを片付けていくことが好き)
- 探索的テストが得意なメンバー(好奇心旺盛、タスクではなく自身の考えを反映させる方が好き)
- 自動化が得意なメンバー(何かを作ることが好き、効率化が好き)
- 人に教えることが得意なメンバー(世話を焼きたい、人の成長を見るのが好き)
こう考えたとき、例えばテストケースが得意なメンバーには「今日の進捗は一段と早いね」という言葉が、そのメンバーの自己重要感を満たす言葉となる。
探索的テストが得意なメンバーならば「こんなバグよく見つけたね。どういう風に考えたの?」となるであろう。
得意を活かした采配である。適材適所へもつながる。
言葉であらわすのならば簡単だ。
だが実際の現場ではそのメンバーが何を得意としているかはすぐにはわからない。
では、どうすればそのメンバーが得意としていることや関心事がわかるのであろうか?
相手に誠実な関心を寄せる
テストケースの進行が遅いメンバーがいた。
つまらなそうにテストケースを実行している。
進捗はもちろん遅い。
期限があるテストでは悩みの種で(もう少しまじめにやってくれ……)と思ったものだ。
だが探索的テストを行ったときはテストケースの時よりはどことなくだが元気に見える。
人よりも見つけるバグ数がほんの少しだけだが多いようだ。
話を聞いてみると「こっちのほうが好き」という。
それ以降采配を変えて探索的テストを多めに行ってもらうようにした。
その差は些細なものではあった。
けれど「どちらかといえば得意」は見つけることができたのだ。
相手を知るには王道はない。
しっかりその相手を見ていなければならない。
相手に関心を寄せると、今まで見えていないものが見えてくるものだ。
まとめ
- 行動を認めることで重要感を持ってもらう
- 相手が認めてほしいと思うことを、褒める
- その相手に誠実な関心を寄せ、得手不得手、関心事を知る
参考